浅草・上野・谷中など、江戸の情緒と職人の技が息づく台東区には、全国的に知られる大祭から、下町の商店街が力を合わせて育ててきた町ぐるみの催しまで多彩な「まつり」が受け継がれています。ここでは代表的な行事の一覧と、その始まり(由来)・みどころをまとめました。※開催時期や内容は年により変更されることがあります。最新情報は各公式発表をご確認ください。
由来:浅草寺創建に関わった三人の人物(檜前浜成・武成兄弟と土師真中知)を神格化して祀る浅草神社の例大祭。江戸初期には「浅草神社例祭」として整い、町人文化の隆盛とともに「三社祭」の名で広く知られるようになりました。
みどころ:本社神輿三基の渡御と、氏子各町の町内神輿が浅草一帯を練り歩く迫力。威勢の良い掛け声と法被、下町らしい粋な所作が交差し、浅草全体が祝祭空間になります。
由来:古くから「日本武尊(ヤマトタケル)」を祀ると伝わる社の例大祭。江戸時代には周辺町人の守護神として厚く信仰され、戦災を乗り越えて復興。巨大な「千貫神輿」で知られ、神輿文化を象徴する祭りとして定着しました。
みどころ:重量級の神輿を大勢で担ぐ勇壮さと、夜の「渡御」で灯りに浮かぶ神輿の神々しさ。狭い路地や橋を抜けるたび、担ぎ手と観客の一体感が高まります。
由来:奈良時代創建と伝わる古社の例大祭。上野・御徒町界隈の総鎮守として町場の繁栄を見守ってきました。神輿渡御や山車行列は、上野の山から市井へ広がった江戸の信仰と娯楽の歴史を今に伝えます。
みどころ:御徒町・稲荷町方面まで巡る広域の渡御と、氏子町会の統一感ある行列。上野の杜の緑と町場のコントラストが美しい祭礼です。
由来:11月の「酉の日」に開かれる開運招福・商売繁盛の市。江戸時代、浅草の鷲明神(鷲神社)と隣接する寺院に人々が参集し、縁起物の熊手を授かる風習が広まりました。熊手は「福をかき集める」「運を引き寄せる」象徴です。
みどころ:熊手商の威勢の良い手締め、提灯に照らされた境内の活気、屋台のにぎわい。毎年の商売繁盛を願う人々で夜遅くまで賑わいます。
由来:7月10日の参拝は「四万六千日」に相当する功徳があるとされ、その縁日に合わせて「ほおずき」を授与・販売したのが始まり。鮮やかな朱の実は厄除けや無病息災の象徴です。
みどころ:境内いっぱいに並ぶ鉢植えのほおずき、風鈴の音、浴衣姿の参拝者。真夏の浅草に涼やかな色と音が満ちます。
由来:年の瀬に開かれる歳の市の一つ。江戸時代、歌舞伎役者や美人画を意匠にした師走の飾り羽子板が流行し、魔をはねのける厄除けとして贈答されました。
みどころ:職人の技が冴える押絵羽子板の数々。きらびやかな意匠と、商人と客の洒脱なやり取りに下町文化が息づきます。
由来:江戸中期に始まった「両国の川開き」を源流に持つ花火の祭典。水辺の安全祈願と慰霊、庶民の娯楽が結びつき、近代以降は地域ぐるみの一大行事として再興されました。
みどころ:川面に映る大輪、スカイツリーや下町の屋根越しに広がる夜空。台東区側の観覧エリアから望む景は、江戸から続く水都のパノラマです。
由来:商店街の活性化と地域交流を目的に始まった夏の恒例行事。七夕飾りや短冊に願い事を託す日本古来の風習を、通り全体の飾り付けとイベントで現代にアレンジしています。
みどころ:アーケードのように連なる吹き流し、ステージ企画や模擬店、家族連れで賑わう歩行者天国。買い物とまち歩きが一体になった“下町の夏”を満喫できます。
由来:「食の道具街」として知られるかっぱ橋道具街の一大セール・催事。料理道具の問屋街が一体となって始めたイベントで、プロと一般が交わる“用の美”の文化祭です。
みどころ:器や包丁、調理機器の展示・特売、実演やワークショップ。職人技と商人の心意気に触れられる、台東区ならではの祭り。
由来:樋口一葉ゆかりの地に植えられた「一葉桜(カンヒザクラ系統)」の開花期に合わせ、旧・吉原の文化を伝える催しとして生まれました。吉原の歴史を学びつつ、芸能や装束の美を現代に伝えます。
みどころ:豪奢なおいらん衣装の行列と、外八文字の優雅な歩み。町会・商店会の協力で作り上げる“江戸の華”が通りを染め上げます。
由来:武家の馬上神事として鎌倉期に整った流鏑馬を、隅田公園で再現・奉納する行事。水辺の安全祈願や豊作祈願の意味を込め、地域の歴史資源を活かした文化伝承として実施されます。
みどころ:疾走する馬上から矢を放つ一瞬の緊張、美しい装束と所作。川辺の新緑と相まって、凛とした時間が流れます。
台東区の祭礼は、①浅草寺・浅草神社を核とした寺社信仰の厚み、②川と橋が織りなす隅田川沿いの水辺文化、③職人・商人のまちが培ってきた商いと技の誇り、という三層で読み解けます。三社祭や鳥越祭が示す神輿と氏子の共同体は、町内のつながりを可視化し、酉の市や羽子板市の歳の市文化は、季節の節目を祝う江戸の知恵を今に伝えます。下町七夕や道具まつりのような商店街発の催しは、観光と日常が交差する「暮らしの祭り」。隅田川花火大会や流鏑馬は、水都としての景観を舞台に、都市と伝統が共鳴する時間を生み出します。
台東区の祭りは、寺社の信仰・水辺の風景・職人と商人の知恵が折り重なった“下町の総合芸術”です。担ぐ・観る・買う・食べる――関わり方はさまざま。気になる一つからでも足を運べば、江戸の時間感覚と現代の都市生活がつながる瞬間に出会えるはず。次の週末、あなたはどの祭りから下町の扉を開きますか。
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