皇居を中心に、政治・経済・文化が凝縮する千代田区には、江戸期から続く大祭から地域密着の季節行事まで、多彩な「まつり」が受け継がれています。本稿では代表的な祭礼を厳選し、起源(由来)・みどころ・開催時期の特徴をまめました※開催日程は年により変動します。最新情報は各公式発表をご確認ください。
由来:神田明神(神田神社)は約1,300年前の創建に遡る古社。江戸城拡張に伴い現在地へ遷座し、商売繁昌・縁結び・勝運の神として崇敬を集めてきました。神田祭は江戸の三大祭の一つに数えられ、江戸初期には徳川政権の隆盛を祝う「天下祭」として将軍家にも拝観された格式を誇ります。奇数年に本祭が行われるのが通例です。
みどころ:氏子町会の神輿が秋葉原・神田・日本橋界隈を練り歩き、豪壮な宮入で最高潮に。歴史と都市の活気が交差する、千代田区を代表する大祭です。
由来:永田町の山王日枝神社の祭礼で、神田祭と交互に隔年で本祭を行うのが特徴。江戸の三大祭の一つで、かつては将軍上覧の「天下祭」として江戸城内に入御した格式を伝えます。
みどころ:山車や神輿、稚児行列など多彩な行事が連なり、皇居周辺から大手町・丸の内方面まで都心を彩る時代絵巻。政治の中枢・オフィス街・老舗が混在する千代田区らしい景観の中で、優雅で気品ある祭列が展開します。
由来:皇居のお濠沿いを中心に桜の名所が点在する千代田区では、春季に区内各所のイベントを総称して「千代田のさくらまつり」として展開。2025年から会期が拡充され、夜間ライトアップやボート場の運営など、街ぐるみの春の催しとして再編されました
みどころ:千鳥ヶ淵の夜桜ライトアップ、九段・半蔵門界隈の回遊、店舗連動のキャンペーンなど。英国大使館前の桜にまつわる史話(明治期の外交官サトウ・アーネストによる植樹)など、国際都市としての歴史も感じられます。
由来:靖國神社は明治2年(1869)に招魂社として創建され、のちに「靖國神社」と改称。みたままつりはお盆期(7月13〜16日)に祖霊を慰める行事として営まれ、境内参道には数万の提灯が掲げられます。
みどころ:光の回廊のように続く提灯の壁、神楽・奉納演芸・屋台など。厳粛さと賑わいが同居する夏の風物詩で、写真映えと静かな祈りの両方を体験できます。
由来:東京大神宮は明治期、都心にいながら伊勢神宮の神々を遥拝できるよう創建された神社。関東大震災後に飯田橋の現在地へ遷座しました。明治33年には神前結婚式をわが国で初めて行った社として知られ、縁結びの信仰が篤いのも特色です。
みどころ:春の例大祭、節分追儺式、七夕関連の授与や行事、月次祭など、四季折々に参拝者の願いが集う都会の鎮守。女性の参拝者が多く、授与品や御朱印の美しさでも人気です。
千代田区の祭礼は、江戸城下を母体とする「天下祭」の格式、皇居を取り巻く水辺景観、そして近代以降の都市発展・外交史が折り重なるのが大きな特徴です。神田祭・山王祭という二大祭は、政治の中心地と庶民文化をつなぐハブとして機能し、都心のオフィス街や商業地に「非日常の回路」を開きます。春の「千代田のさくらまつり」は、行政・観光・地域団体が連携し、歴史資源(お濠や外濠公園)を現代的な夜間演出や回遊施策へと接続。夏のみたままつりは慰霊と感謝の祈りを核に、都市の記憶を次世代へと橋渡ししています。こうした文脈の上に、東京大神宮のような近代神社の祭礼・人生儀礼が加わり、千代田区の「まつり」は信仰・観光・都市デザインの重層的なプラットフォームとなっています
千代田区の祭りは、江戸の大祭「神田祭」「山王祭」に象徴される歴史的スケールと、皇居外苑・お濠沿いの桜がつなぐ都市景観、そして近代以降の信仰・人生儀礼を担う東京大神宮などが織りなす、多層的な文化資源です。単に「見る」だけでなく、地域の由緒や都市の成り立ちに思いを馳せながら回遊すると、都心の街並みに新たな文脈が立ち上がります。季節ごとに表情を変える千代田区で、今年はどの祭りから体験してみますか。
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