台東区は、浅草・上野・谷中といった下町情緒あふれるエリアを抱える区で、江戸時代から続く職人の手仕事、問屋街の文化、 参拝客向けの名物菓子など「観光のおみやげ」と「プロの道具」と「伝統工芸」が同時にそろう非常に個性的な地域です。 いまでも区内には革製品、刃物、厨房道具、扇子、印伝、仏具、江戸切子などを専門に扱う工房・職人・問屋が集中しており、 一度廃れかけた技術を観光と結びつけて次世代へつないでいるのが大きな特徴です。 また、浅草寺を中心とした門前町として育った歴史から、雷おこし・人形焼・芋ようかんといった名物和菓子も台東区を代表する特産品として知られています。
台東区の特産品としてまず外せないのが、浅草エリアの名物和菓子です。特に有名なのが「雷おこし」。 「雷門」の名前にちなんだ浅草伝統の米菓で、炒った米や麦を水あめ・砂糖で固めた香ばしいおこしは、 江戸後期にはすでに縁起物として人気を集めていました。サクッとした歯ざわりと軽い甘さで、 いまはピーナッツ入りや黒ゴマ風味などバリエーションも多く、観光客だけでなく地元の人にも“浅草らしい手土産”として定着しています。
「人形焼」も台東区の名物です。小麦粉ベースの生地を型に流し込み、あんこを入れて焼き上げる小ぶりのカステラ饅頭で、 七福神や雷門の提灯、鳩など浅草らしいモチーフの型が使われるのが特徴です。焼きたては外側が香ばしく、中はしっとり甘いこしあん。 個包装しやすく日持ちもしやすいことから、企業の東京土産としてもよく使われます。
さらに上野・浅草エリア周辺では、素朴な甘さの「芋ようかん」もロングセラーとして知られています。 さつまいもを丁寧に裏ごしし、砂糖と少量の塩だけでまとめた昔ながらの製法で、芋本来のほくほくした香りと自然な甘みが楽しめます。 冷やして食べるとしっとり、少し焼くと香ばしいというアレンジのしやすさも人気の理由で、観光帰りの手土産ランキングでは常連の存在です。
台東区は「ものづくりのまち」と呼ばれるほど伝統工芸の工房が集まっています。その代表例が「江戸扇子」。 細やかな骨組みに和紙や絹を貼り、職人が一本ずつ柄を付けて仕上げる扇子は、夏の実用品であると同時に和装小物・舞踊小道具としても評価が高い逸品です。 花火、雷門、隅田川、桜など下町らしい柄が描かれたものは海外観光客にも人気で、いまや実用+インテリアとしての需要も増えています。
また、台東区東部(浅草~浅草橋・蔵前・鳥越周辺)は古くから革問屋・バッグ工房・ベルト工場が集積するエリアとしても有名です。 牛革の裁断から縫製、コバ磨き(断面仕上げ)まで一貫して行う小規模工房も多く、丈夫で長く使える日本製の財布やバッグは 「下町メイドのレザークラフト」としてブランド化が進んでいます。大量生産では出せない手触りや細部の仕上げこそが付加価値で、 オーダーメイドの名刺入れ・長財布など“ビジネスで毎日使う一生モノ”を求めてわざわざ足を運ぶファンも少なくありません。
さらに、浅草寺の門前町として発展した歴史から、仏壇・仏具・数珠といった宗教関連の職人文化が根付いているのも台東区の特長です。 金箔貼りや漆塗り、金具の打ち出しといった細工は熟練を要し、単なる日用品ではなく「祈りの道具」としての価値が守られています。 こうした伝統工芸は、修理・修復の需要も高く、技術が循環して継承されるという強い土台を今も保っています。
また、台東区周辺では江戸切子などカットガラスも親しまれています。ガラス表面に細かなカット模様を刻み、光を複雑に反射させることで生まれる 繊細な輝きは「東京の粋」の象徴とされ、贈答品や海外向けギフトとしても高い評価を受けています。 グラスやぐい呑みなど、実際に使える器として人気がある点も魅力です。
台東区の特産品は、観光客用の「おみやげ」だけではありません。料理人・飲食店オーナーが全国から買い付けに来る専門の問屋街も、台東区を語るうえで欠かせない存在です。 特に有名なのが「かっぱ橋道具街」(台東区西浅草〜松が谷エリア)。ここは業務用の調理器具、包丁、鍋、フライパン、食品サンプル、ラーメン丼、店舗用ののれん・看板まで、 飲食店を開くためのほぼすべてがそろう一大マーケットです。プロ仕様の包丁や銅鍋など、長く使える道具そのものが“台東区の名産品”として全国レベルで知られており、 「開業前にまずかっぱ橋へ行け」というのは飲食業界では半ば常識になっています。
この「道具そのものが地域の特産」という構図は、ほかの区にはなかなかありません。台東区の卸・問屋文化は、 江戸時代から続く商いと、関東一円の物流の拠点だったという歴史の延長線上にあります。 観光客が包丁や食品サンプルを「東京土産」として買っていくことも多く、プロ用の実用品がインバウンド向けギフトへ転化している点も台東区らしい進化です。
台東区・浅草界わいは、祭り文化と着物文化がいまも生活に根付く土地柄です。そのため、足袋や草履、下駄、巾着袋といった和装小物の店も多く、 これらも「台東区らしい特産品」と言えます。量販店では見かけない、職人が鼻緒をすげる下駄や、履き心地を調整した雪駄などは、 観光客にとっては珍しい“実際に履ける江戸文化”であり、地元の人にとっては祭礼や踊りの必需品です。 浅草三社祭や各町内のお祭りを支えるこうした履物産業は、単なる観光土産ではなく、地域の暮らしとつながったリアルな特産と言えます。
台東区の特産品の魅力は、どれも「安い大量生産」ではなく「長く付き合えるもの」だという点です。 雷おこしや人形焼のように歴史ある味を守り続ける老舗、革財布・扇子・仏具のように職人が素材と向き合って仕上げる一点物、 そしてかっぱ橋道具街のようにプロの道具を扱い続けて信用を築いてきた専門店街。 いずれも“本物を買いに行く場所”としてブランド化しており、単なる下町観光を超えて「ここで買った」と言いたくなる強いストーリー性を持っています。
観光で訪れる人にとっては、浅草寺参拝のついでに気軽に手に入る名物菓子が台東区の顔。 ものづくりや開業を考える人にとっては、かっぱ橋の厨房道具や浅草・蔵前界わいの革製品が台東区の顔。 つまり台東区は、食・工芸・プロ道具の3つを同時に楽しめる「東京でもっとも濃い職人のまち」として今も進化を続けています。
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