都心の賃貸オフィスを検討する際、賃料や駅距離だけで判断すると、入居後に「思ったよりレイアウトが組みにくい」「基準階の形がいびつで増床しにくい」といったギャップが生まれます。原因の多くは、近代以前から連続する旧道路軸(古道・運河跡・城下の道筋)と、それに沿って形成された街区構成にあります。本稿では、千代田区・台東区・中央区の実例を念頭に、旧道路軸と街区がオフィス区画に及ぼす影響、注意点、回避策を体系的にまとめます。
江戸期の城下計画や明治以降の区画整理は、川筋・堀・古道を下敷きにしています。これらは現在も道路斜線・街区線として残り、以下のような幾何学的な歪みを生みます。
オフィスの使い勝手は街区寸法と道路構造に強く依存します。典型的な課題は次の通りです。
外濠・内濠に沿った屈曲と、丸の内・大手町の大街区が同居。大街区は広大だが、歴史的な道路軸に縛られる敷地では、台形基準階や角度付きファサードが残り、島型レイアウトの列長が縮む。神田・御茶ノ水では古道と坂地形の影響で、短辺×長辺の比が極端な中小ビルが多い。
上野台地の縁と低地の格子が交差。浅草周辺は旧河道・見番小路の細街路が網の目になり、間口が狭く奥に深い敷地が典型。スケルトン天井・フリーアドレスで逃げやすいが、会議室モジュールがはまりにくいため、可動間仕切と吸音の工夫が要る。
日本橋川・京橋川・隅田川の曲線に沿う街区が多く、角地が鋭角になりやすい。晴海・勝どきなどの埋立地は大街区だが、運河・水際線の斜行が残る区画では扇形プランが発生し、抜け感は高い一方で、床効率と遮音計画が課題になる。
旧道路軸と街区構成は、オフィスの形・高さ・動線・音・コストにまで波及する“見えない設計条件”です。千代田区では外濠由来の屈曲、台東区では細街路と旧河道、中央区では水際線と斜行がそれぞれ固有の制約を生みます。反面、これらの制約を前提にレイアウト思想をABW中心へ切り替え、斜行部を来客ゾーンやラウンジに活用すれば、場所性を活かしたオフィスに昇華できます。物件図面と街区の来歴をセットで読み解くことが、入居後の後悔を防ぐ最短ルートです。
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