オフィスの原状回復とは、賃貸契約が終了した際に、借主が借りた状態(入居前の状態)に戻すために行う修繕作業のことを指します。
この原状回復義務は、賃貸契約に基づき、オフィスビルや商業施設、賃貸事務所などの物件を退去する際に借主が負う義務です。
しかし、原状回復と一口に言っても、具体的にどこまで修繕を行うべきかについては曖昧な点も多く、借主と貸主の間でトラブルが発生することもあります。
本記事では、オフィスの原状回復についての基本的な概念や、具体的にどこまで修繕を行うべきか、原状回復の対象外となるもの、そしてトラブルを避けるためのポイントについて詳しく説明します。
原状回復とは、オフィスや事務所を賃貸した際に、借主が利用する過程で発生した汚れや損傷を修復し、契約時の状態に戻す義務を指します。
この「契約時の状態」とは、一般的には入居時の状態を指しますが、場合によっては、改装や設備の取り付けを行った場合など、契約時に合意された変更内容が反映された状態になることもあります。
日本では、原状回復の範囲については「通常の使用による劣化」と「借主の故意・過失による損耗や破損」の区別が重要です。
通常の使用による経年劣化や自然摩耗は、原状回復の対象外となることが多いですが、借主の過失や不注意で発生した損傷は借主の負担で修復する必要があります。
オフィスの原状回復において、どこまで修繕を行う必要があるかは、契約書に記載された内容や、入居時に貸主と取り交わした合意に依存します。
以下は、原状回復の具体的な範囲に関する一般的なガイドラインです。
オフィスでは、壁や天井にピンやネジで穴を開けたり、掲示物を貼ったりすることがあります。
これらは、通常のオフィス利用ではよく見られるものですが、原状回復の際には、壁や天井にできた穴や跡を修復する必要があります。
ピンやネジで開けた穴、壁のへこみなどは原状回復の対象です。
これらの修繕には、パテ埋めや塗装が必要になることが一般的です。
壁紙が汚れていたり、破れていたりする場合も修復が必要です。
ただし、通常の使用による経年劣化については、借主が修復費用を負担しなくてもよい場合があります。
床材(カーペットやフローリング)の損傷や汚れも原状回復の範囲に含まれることが多いです。
特に、オフィスではデスクや椅子の移動によって床に傷がついたり、飲み物をこぼしたことでカーペットに汚れが付着することがあるため、その修復が必要になるケースが一般的です。
飲み物やインクなどによるシミは借主の責任で清掃または張り替えを行う必要があります。
フローリングの傷: デスクや椅子の移動によってできた擦り傷やへこみも修復が求められる場合があります。
オフィスでは、契約期間中に設備や什器を設置することがありますが、これらは原状回復の際に撤去する必要があります。
特に、貸主が設置したものではなく、借主が追加で取り付けたもの(エアコン、照明器具、パーテーションなど)は、退去時にすべて取り外すことが求められる場合が多いです。
借主が設置した設備はすべて撤去し、設置時に生じた穴や配線跡も修復する必要があります。
パーテーションや棚の撤去: オフィスのレイアウト変更のために取り付けたパーテーションや棚も、退去時には元に戻すことが一般的です。
オフィスでは、インターネットや電話回線の設備が必要不可欠ですが、これらの配線や設備も原状回復の対象となります。
特に、床や壁に穴を開けて配線を通した場合は、その部分を元に戻す必要があります。
インターネットや電話の配線はすべて撤去し、配線用の穴や固定具跡も修復します。
オフィスの原状回復において、借主が負担しなくてもよい項目も存在します。
主に「通常の使用による経年劣化」や「自然損耗」に該当するものが、原状回復の対象外となります。
例えば、壁紙やカーペットが時間とともに日焼けして色あせたり、フローリングが自然に磨耗したりする場合、これは通常の使用による劣化と見なされ、借主が修繕する義務はありません。
オフィスに備え付けの設備(エアコン、照明器具など)が老朽化や自然故障によって機能しなくなった場合も、借主の責任にはなりません。
原状回復に関するトラブルを避けるためには、事前の対策が重要です。
入居時に物件の状態を写真に残しておく、契約時に原状回復の範囲を明確に確認するなどの工夫が必要です。
入居時の物件の状態を写真やビデオで記録しておくことで、退去時に貸主との間でトラブルが発生した際に証拠として提示できます。
契約内容を確認する: 賃貸契約書に記載された原状回復の範囲や条件をしっかり確認し、曖昧な点があれば入居時に貸主と話し合っておくことが重要です。
オフィスの原状回復は、壁や床の修繕、設備の撤去、配線の整備など、さまざまな範囲に及びますが、借主が負担すべき修繕は「故意・過失による損耗や破損」に限られ、「通常の使用による劣化」や「自然損耗」は対象外です。
原状回復をスムーズに行うためには、契約時の合意内容を確認し、入居時の物件の状態を記録しておくことがトラブル防止につながります。